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長野県と新潟県の県境に位置する秋山郷は古くから豪雪地帯として閉ざされる地域でもあり、苗場山麓による自然の恩恵と食の保存により豊富な湧水とともに暮らしてきました。マタギと呼ばれる狩猟に長けた技や雪国ならではの食の恵みよって採取豊かな暮らしをしていましたが、かつて天候不順による飢饉では食料不足により消滅してしまった村が存在します。迫る冬を前に食料が足りない状態はどんな心境だったのでしょうか。過去を旅することから学び、現代と比較するなかで、本来の豊かさを発見する旅に出かけてみませんか。

苗場山麓の絶景と秘境の食を堪能!廃村から食の大切さを学ぶSDGsツアー

景
『秘境』といわれる閉ざされる地で『絶景』に出会う
新潟県越後湯沢駅から車を走らせること約1時間。秋山郷の入口でもある津南町へ到着し苗場山(ナエバサン)方面を目指すと秋山郷へ到着します。秋山郷とは新潟県と長野県に跨る地域で日本百名山でもある苗場山の麓を指します。高山湿原でも知られ標高2,000m級の苗場山とその山麓エリアは、冬になれば3m以上の雪が積もる世界有数な豪雪地帯でもあります。冬季の大雪に閉ざされる厳しい自然のなかで築かれてきた暮らしと、保存を主とする食文化が受け継がれています。雪解けによる豊富な湧水は広大な広葉樹の森を潤し、雪国の大地を力強く肥沃な大地へ育てています。


標高2,000m級の苗場山と鳥甲山(トリカブトヤマ)の噴火によって形成された大地の中央を切り裂くように流れる中津川。大量の雪解け水が溶岩の大地で蓄えられ、豊富な湧水となって田畑を潤しながら流れる。日本海の湿気を吸った冬の低気圧は、苗場山麓で大量の降雪をもたらし、再び川となって日本海へ注ぐ。


食の宝庫。雪の恵みによって肥沃な大地へ
食
天然の雪室が熟成される大地
12月から4月いっぱいは大地に雪が降り積もり、5カ月間は雪と過ごす世界がここにはあります。豪雪で閉ざされた地域故に受け継がれてきた食文化があり、春から秋に採れた自然の恵みを保存し、食料を蓄えて越冬する暮らしが根付いています。今回のツアーで夕食をごちそうになった民主「出口屋」ではこの地ならではの食で旅人をおもてなししてくれます。テーブルに並ぶのはほぼすべてこの地で収穫し、保存し、調理したものばかり。外からの食材に頼ることなく毎日の食が成り立つ知恵と暮らしがここにはあります。
また苗場山麓ジオパークにも指定されているこの地は、自然の豊かさと水の恵みも象徴的な地域で集落を少し歩くと豊富な湧水を実感できます。出口屋の裏からは大量に湧き出る水を活用し「シナノユキマス」を育て宿泊客のおもてなし用に提供しています。水不足、渇水とは程遠い豊富な湧水は一定の水温で冬季間は雪を消す為に利用し、夏は喉を潤す水として、食材の冷蔵にも活用されています。そんな水が大地を潤し育つ食材はどれほど純粋でおいしいことでしょうか。脈々と受け継がれてきた技と味が雪の深さ以上に滋味深い美味しさを楽しませてくれます。







マタギの宿としても人気な民宿『出口屋』ではマタギであるご主人が自ら獲り捌いたジビエ料理も楽しめます。山で摘んできた晩春の山菜が丁寧に調理され、薬草でもあるマタタビの天ぷらやアメ色に輝く野沢菜、秋山豆腐、タケノコ汁も受け継いできた味と食。夜は先祖から伝わるマタギ精神について会話が弾み「いただく」ことの大切さを改めて感じさせてくれます。


かつての飢饉から食の大切さを学ぶ
地元ガイドによる秋山郷のストーリーを解説
地殻活動が活発だった1700年代は世界でも大規模な噴火が続いていました。日本も例外ではなく浅間山の噴火による天明の飢饉、天候不順や冷害によって天保の飢饉が発生しました。数年に渡る悪天候によって作物が採れなくなり自給自足に長けていた秋山郷の人々でさえ、数年間続いた天災を乗り越えることがでずに廃村となってしまった集落が存在します。民族資料室「とねんぼ」には飢饉の資料が保存されており、当時の様子を振り返ることができます。
かつて食べも物が無ければ生命に直結する暮らしが存在しており、現在はコンビニ、スーパーでいつでも食料が手に入る時代となりましたが当時は子供へも食べ物を分けることが出来なかった背景には驚きを隠せません。
学



食料飢饉によって廃村となってしまった「旧甘酒村」と「旧大秋山村」は現在も住民によって守られており、誰でも手を添えることができるように整備されています。今では食べることも珍しくなった栃の実は、収穫解禁日が決められていたほど貴重で重宝されていた実でもあったとのこと。民族資料室「とねんぼ」には当時の飢饉の様子を伝える資料や秋山郷にまつわるマタギ文化や当時の暮らしが展示されています。





新たな食を堪能する!
秋山の食を新たな視点で表現
長野県栄村をベースに活動する「地層食堂」は土地の食材を活用して表現する料理を提供しています。今回は秋山郷の四季を通して親しまれている食文化を自然と共存する暮らしをヒントに、自生する山野草や冬季の保存食に注目し新たな食の観点で表現してみました。現地のフィールドワークを重ねて秋山郷で伝えれてきた食を若い新たな視点で再現しました。秋山郷で活動する方とも交流してこれかの地域の可能性について交流会も行いました。





未来へ繋ぐ
To the Future
いつでもどこでも食が手に入り安心安全が加速し無駄が省かれる合理化社会では、見た目や形が優先され一定の規格に収まらなければ規格外として、期限が切れると廃棄されるのが当然となりました。昔の時代に振り返ればお茶碗についたお米を白湯やお茶で飲み、一粒一粒に感謝し、手を合わせ「いただきます」の心や意味も私達から消えかかっているのではないでしょうか。
紅葉の名勝としても有名なここ秋山郷は日帰りドライブで訪れる方も多く、景勝地を楽しむ方が多く訪れます。一歩踏み込めば土地本来の魅力が伝わり、住む方達に耳を傾け交流することで旅となって何倍も深く心に刻まれるのではないでしょうか。私達が忘れかけている自然や感謝、豊かさの答えにきっと隠されているはずでしょう。ここで暮らす方々に最大限の尊敬を持って再訪したいと思います。

Tour date:2022年7月/10月 運営:サスティナブルツーリズム秋山郷実行委員会
株式会社みらい
MIRAI company
この事業は2022年「長野県地域発元気づくり支援金」を活用しています。